昨日は京都は葵祭でしたが、何とか雨も降らず多くの見物
客の方が事務所前にいました。
気温が高かったせいか、歩いている馬は多少機嫌が悪そうでしたが…。
さて、相続登記の添付書面では以前お話しましたが、被相続人
の死亡から出生までのすべての戸籍、除籍、原戸籍謄本を添付
する必要があります。添付趣旨は、法定の相続人を確定させる
ためです。
しかし、除籍謄本等においては保存期間の経過(以前は80年でしたが
平成22年法務省令22号改正によって150年になりました)により、
除却されて、役所から取得することができない場合もたくさんあります。
登記実務ではこの場合、「廃棄処分により除籍謄本を交付できない」旨の
市町村長の証明書(よく、廃棄証明書といいます)と併せて『他に相続人は
いない旨の証明書』を添付することで、登記申請を行います。
この証明書は、共同相続人全員の印鑑証明書付きのものでなければなり
ません(昭和44年3月3日民事甲373・昭和55年2月14日民三867等)。
相続人の皆様に説明して、遺産分割協議書に押印いただく際に併せて
押印いただくことが常でして、ほとんどの皆様は御理解いただいて証明書
に押印をしていただきます。
しかし、下記のような質疑応答のおかげで、相続人の中に相続放棄者がい
る場合には、当該相続放棄者も証明書の主体になります。
除籍謄本を添付できない場合の相続登記添付書類の取扱い(登研383号)
《相続登記手続(総説)》《添付書面(その他の書面)》
○要旨 「火災焼失により除籍謄本を添付できない」旨の市町村長の証明書及び
「他に相続人はない」旨の相続人全員の証明書(印鑑証明書付)を添付して相続登
記を申請する場合の右相続人には、相続を放棄した者も含まれる。
▽問 相続登記を申請するに当たり、市町村長から「火災焼失により除籍謄本を添付
できない」旨の証明書を添付した場合、「他に相続人はない」旨の相続人全員の証明書
を添付する取扱いとなっているが、相続を放棄した者もその中に含まれるでしょうか。
◇答 相続放棄した者も含まれるものと考えます。
なお、右証明書には、相続人全員の印鑑証明書を添付することが必要です
(昭和44、3、3民事甲373号民事局長回答参照)
相続放棄者は法律上、相続人でなかったものとみなさるはずなのに
その証明書の主体になるのは非常にナンセンスだと私は考えていま
すが、法務局は今後もこのスタンスを変えることは無さそうです。
何度か私は、相続放棄者の理解を得られず、苦労したことがあります(泣…)。
登記研究717号182項を参考に、どうしても相続人の中に被相続人の身分関係
を証明できない事情があるためその理由を証明書中に記載して、登記を受理して
もらったケースもありますが、例外中の例外と考えるが妥当でしょう。
司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志