2016年8月アーカイブ

取締役の任期の短縮

夏待った只中。

『暑い…』毎日このフレーズしか言っていないような気が

しております

ビールは美味しい季節ですが、暑さが続くとつらいです。

 

商事法務2107号13項に平成27年度会社法関係

の重要判例が紹介されており、その中で一つ気になった

ものを一つ。

                            

事例概要 (東京地裁平成27年6月29日判時2274号113項)

・ 非公開会社の取締役として2名が平成20年5月に就任した。

・ この会社の定款には「取締役の任期は、選任後10年以内に

 終了する事業年度のうち、最終の事業年度に関する定時株主

 総会の終結時まで」とある。

・ 平成23年1月開催の臨時総会で定款変更を行い、上記取締役

 の任期規定を「選任後1年以内に~」にした。

・ この取締役らは、変更後定款規定により任期満了退任となって、

 その登記もされた。

・ この取締役らの任期は、早くても平成28年6月末日まであった

 

取締役らの主張

① 会社が主位的に任期の短縮にかかる定款変更を行っても、取締役

 の承諾がない限り、すでに成立している委任契約関係を当然に変更

 する効力はないとして、取締役の地位を有する確認を求めた

② 予備的に、退任によって生じた損害について会社法339条2項の類推

 適用に損害賠償請求が可能であるとして、その請求をした。

 

判決

①⇒取締役の任期の短縮にかかる定款変更は、解任と同様の効果を生じさ

  せるものであり、定款変更によって退任させられた取締役の保護は解任

  時と同様に損害賠償によって調製すればよいので、当該定款変更の

  効力は既存の取締役に当然に適用される。

②⇒会社法339条2項は、株主総会決議によって解任された取締役につき

  正当な理由がある場合を除いて、解任された取締役に生じた損害にかか

  る請求権を与えたものだが、この趣旨は、任期の短縮により退任し、再任

  されなかったことに正当な理由がある場合を除き、同条同項の類推適用に

  より、会社に対して再任されなかったことによって生じた損害の賠償を請求

  できると解すべきとして、取締役らの不再任について正当な理由は無いとし

  て、取締役らに損害を認定した。

 

                                 

   

 ①については、実務上変更後の任期規定が適用され、登記の際も定款変更

決議が効力発生した時点で、任期満了による退任登記をしています。これにつ

いては異論を唱える方はいないでしょう。

 

 ②については、取締役の解任と任期の短縮にかかる定款変更を同等の

効果としている点は、ある意味妥当かなという印象です。

 取締役の解任決議となると、取締役の業務執行上の重要な問題点

がある場合等、様々な要因に起因して解任されるのが通常かとは思いますが、

解任決議であれ定款変更であれ株主総会の特別決議を要する点も同じですので

、保護されるべき取締役の利益も同じと考えるのが自然だと考えます。

 

 

 経験上、任期を伸長するケースは多いですが、短縮するケースはあまりあり

ません。ただ、このような事例に遭遇した際は注意が必要ですね。

 

 

          司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志