2015年9月アーカイブ

会社における定款について

今日からシルバーウィークスタートですね。

私は本日は業務をしておりますが、明日

からはお休みをいただきます。

それでも4日もお休みがあるのですから、

普段出来ていない家族サービスを最優先

として、趣味のロードバイクも隙間時間で

楽しみたいなと思っております。

 

本日は株式会社における定款について

です。よく商業登記の御依頼をいただ

いた際に、登記申請を行う前提として

定款を確認しなければならない場面は

多くあります。

 

何故なら会社法では、様々な規定が

設けられていますが、よく条文中に

「定款に別段の定めがない限り」

「定款の定めによって」があり、会社

の定款を見なければ、最終的な手続

方針決定に至れないからです。

 

よくあるのは、役員の任期又は役員の

員数・補欠増員規定の有無、取締役会

を置いていない会社の代表取締役の

選任方法を定款で確認します。

 

非公開会社では役員任期が最大10年

まで伸長できることもあり、その間に定款

を変更されてたりすると、私が把握してい

る定款内容の認識にズレが生じたりします。

 

よって、最新の定款を確認して実務を進めて

いく必要性があります。

 

実は会社法では定款に必ず定めなければ

ならない事項(必要的記載事項)は、非常に

少ないのはご存知かと思います。

(会社法27条)

①目的

②商号

③本店の所在地

④設立に際して出資される財産の価額又は

 その最低額

⑤発起人の氏名又は名称及び住所

 

④と⑤は会社を設立する際に必要な事項ですから

実質としては①~③だけでよいことになります。

 

要は上記の必要的記載事項が定款に記載されていれば、

会社法的要請は充たす訳ですが、通常そんな会社はあり

ませんよね。

 

定款は株式会社の内部自治において最大法規です

から、やはり必要とはされていない事項もきちんと

定めておくことが重要です。

前述したとおり、会社法は定款の定めによって、法文

とは異なる運用を認めておりますので、会社の実情

に応じてきめ細かく定めることできます。

これを相対的記載事項と呼びます。

例えば株式の譲渡制限規定や株券の発行有無や

役員の任期伸長等も当該事項に含まれます。

 

必要的記載事項と相対的記載事項以外を任意的

記載事項があります。会社法29条中では「その他

の事項でこの法律の規定に違反しないもの」と規定

されてまして、定款に定めても定めなくてもよい内容

にはなります。

ただ定款で一度規定してしまうと、株主等を拘束する

ことになりますので、内容について吟味は必要です。

例としては、定時総会の招集時期、株主総会の議長

、事業年度、公告方法等です。

 

事業年度は任意的記載事項の位置づけではあるもの

の、通常は税務署等に届ける際に事業年度が確定し

なければなりませんので、事業年度の開始日と終結日

は必ず定められています。

公告方法は定款に定めてなければ、自動的に官報

公告になります(会社法911条3項29号)。

 

会社法が平成18年5月1日に施行されて来年で10年を

迎えますが、皆様の会社の定款は会社法の条文に

即した内容になっていますでしょうか。

取締役には定款を整備する義務がありますし、会社

の定款自治というのは事業経営を永続的かつ安全

に行っていく上で大切なファクターです。

 

一度、ゆっくり定款の内容を確認してみてはいかが

でしょうか?

 

 

   司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志

 

 

各種法人の利益相反取引の処理②

関東特に北関東では大雨による未曾有の

災害が発生し、今現在も多くの方が先の

見えない不安に押し潰されそうになりが

ら、避難所で過ごされています。

人類の歴史を見ても常に自然災害は発生

し、その教訓を活かしながら防災対策を

講じてきた訳ですが、やはり自然というの

は我々の想像をはるかに凌ぐモノだなあ

と深く感じます。

 

今日は前回からの続きで、会社以外の法人

類型に利益相反が生じた際の対応を簡単に

ご紹介します。

 

・社会福祉法人

 社会福祉法人に、理事3名以上監事1名以上の

設置が義務付けられており、理事はそれぞれ法人

を代表します。ただし、定款をもって、その代表権

を制限することができます(社会福祉法38条)。

 理事と社会福祉法人の利益が相反する時は、

理事は代表権有しないとされていますので、この

場合、所轄庁は利害関係人または職権で、特別

代理人を選任しなければなりません(社会福祉法

39条の4)。

 この選任された特別代理人が法人を代表する

ことで取引や登記申請を進めていくことになります。

 特別代理人の資格基準は行政窓口で若干異なり

ますので、事前にその要件等について確認しておく

ことが必要になります。

 

 すべての事例に場合に特別代理人の選任が必要で

はなく、下記のような例外もあるようです。

① 定款中に「理事長のみが、この法人を代表する」、

「理事長個人と利益相反する行為となる事項・・・につ
いては、理事会において選任する他の理事が理事長の
職務を代理する」旨の定めがある社会福祉法人と当該法
人の理事長との利益相反する事項について、理事会で
選任された理事が当該法人を代表して取引をする場合に
は、特別代理人の選任を要しない。
② ①の場合において、当該理事の代理権限を証する書面
は、理事会で選任された理事が当該法人を代表して理事長
と取引をするとともに所有権移転の登記を申請する場合には、
当該法人の定款、理事会の議事録(出席理事全員の印鑑証
明書付き)及び当該法人の理事についての所轄庁の証明書
である。
               (平成3年8月19日民三4436)
 
通常、社会福祉法人の多くは理事長のみが代表権を有する
旨の定めを置いていますので、利益相反事項に関する定め
を置いておけば法人内部の決議処理で手続を進められる
ということになります。
 
 
       司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志
 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「席上」辞任における辞任届の援用

朝晩だいぶ涼しくなりまして、少しずつ

秋の気配を感じる今日この頃。

ただ、雨が降る日が多くて少し嫌気が

さしております。

 

 

役員変更登記の際、商業登記法54条より

「就任を承諾したことを証する書面」を添付

しなければなりません。

また同様の証明力がある書面で、就任者

本人が選任される株主総会等の議事録上

で、当該総会等の場に置いて、その就任

の意思表示を示した表現があれば、議事録を

就任承諾書として援用することが認められて

います。

援用するためには、総会等の場において

就任の意思表示をしたことが本質的な

要素として重要ですので、株主総会の

議事録の出席役員欄に必ず記載する

ように留意する必要があります。

 

以上は就任の局面のお話ですが、辞任の

局面では同等の取扱は認められている

でしょうか。

 

・株主総会議事録中、役員が辞任した旨の

記載がある場合は、辞任届の添付は要しない

(登記研究81号)

・株主総会議事録に、席上取締役は辞任を申し

出た旨の記載があるときは、当該取締役の辞任

による登記申請書には、辞任届を添付を要しない

(登記研究83号)

 

少し古い質疑応答ですが、上記のとおり援用は

可能です。

 

ただ、私は辞任届の議事録上での援用は消極的

立場をとっています。株主総会等の議場の場で

取締役等が出席している事実があり、その場で

辞任の意思表示を示したと議事録の明確にある

のであるから、本人が会社宛に届出した辞任届

と、その意味のおいては何ら変わりないもので

すから、登記申請上は特段問題にならないの

理解できます。

この理解でいくと、商業登記規則61条6号で

求められる代表取締役が総会で席上辞任を

示した場合は、当該議事録への押印に個人

実印又は会社実印が強制されるとの取扱

になるのでしょうか。

 

ただ、取締役と会社の関係は委任契約である

所、その委任契約の撤回の証明として、会社

に対して辞任届とういう形式の明確な文書

があって然るべきでないかと考えております。

あくまで株主総会議事録は、株主総会という

株式会社における最高意思決定機関であり

その議事における内容を記録したもので、虚偽

の記載があってはなりません。

虚偽の記載を行った場合は、会社法976条に

より罰せられることになります。

 

私共司法書士は、登記申請代理人として会社

より交付される書面について、その書面が法令

上真正であることを確認した上で、登記申請に

のぞむ必要があります。

登記申請が結果として完了すればよいというスタ

ンスではなく、その登記事由に至るまでのプロセス

に主眼を置いていくべきではないでしょうか。

 

 

  司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志