「席上」辞任における辞任届の援用

朝晩だいぶ涼しくなりまして、少しずつ

秋の気配を感じる今日この頃。

ただ、雨が降る日が多くて少し嫌気が

さしております。

 

 

役員変更登記の際、商業登記法54条より

「就任を承諾したことを証する書面」を添付

しなければなりません。

また同様の証明力がある書面で、就任者

本人が選任される株主総会等の議事録上

で、当該総会等の場に置いて、その就任

の意思表示を示した表現があれば、議事録を

就任承諾書として援用することが認められて

います。

援用するためには、総会等の場において

就任の意思表示をしたことが本質的な

要素として重要ですので、株主総会の

議事録の出席役員欄に必ず記載する

ように留意する必要があります。

 

以上は就任の局面のお話ですが、辞任の

局面では同等の取扱は認められている

でしょうか。

 

・株主総会議事録中、役員が辞任した旨の

記載がある場合は、辞任届の添付は要しない

(登記研究81号)

・株主総会議事録に、席上取締役は辞任を申し

出た旨の記載があるときは、当該取締役の辞任

による登記申請書には、辞任届を添付を要しない

(登記研究83号)

 

少し古い質疑応答ですが、上記のとおり援用は

可能です。

 

ただ、私は辞任届の議事録上での援用は消極的

立場をとっています。株主総会等の議場の場で

取締役等が出席している事実があり、その場で

辞任の意思表示を示したと議事録の明確にある

のであるから、本人が会社宛に届出した辞任届

と、その意味のおいては何ら変わりないもので

すから、登記申請上は特段問題にならないの

理解できます。

この理解でいくと、商業登記規則61条6号で

求められる代表取締役が総会で席上辞任を

示した場合は、当該議事録への押印に個人

実印又は会社実印が強制されるとの取扱

になるのでしょうか。

 

ただ、取締役と会社の関係は委任契約である

所、その委任契約の撤回の証明として、会社

に対して辞任届とういう形式の明確な文書

があって然るべきでないかと考えております。

あくまで株主総会議事録は、株主総会という

株式会社における最高意思決定機関であり

その議事における内容を記録したもので、虚偽

の記載があってはなりません。

虚偽の記載を行った場合は、会社法976条に

より罰せられることになります。

 

私共司法書士は、登記申請代理人として会社

より交付される書面について、その書面が法令

上真正であることを確認した上で、登記申請に

のぞむ必要があります。

登記申請が結果として完了すればよいというスタ

ンスではなく、その登記事由に至るまでのプロセス

に主眼を置いていくべきではないでしょうか。

 

 

  司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志

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