未成年者の相続放棄

今日から数日間は雨が続くようですね。

昨日は、研修会に参加し同期の司法書士と、何年ぶりか分からない

くらいの、再開を果たしました。

その方は新人研修の時から15キロ太ったということで、最初誰だか分からない

くらいでしたが。

 

今日は、未成年者の相続放棄についてです。

 

以前、当ブログで未成年者のことに触れましたが、ご存知のとおり、未成年者は

通常はその父母に親権に属しており、父母は法定の代理人とされています。

 

(事例)     父A  母B  子C(未成年者)

    父が急死し、相続が発生した。母Bは子Cの相続放棄手続を単独で

   行うことは可能でしょうか。

 

(結論)    母Bは単独で相続放棄手続は行えず、特別代理人の選任申立を

        行う必要がある。

 

 民法826条は、「親権者である父母とその子との利益が相反する行為については、

親権者は、その子のために特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければな

らない」とされています。このような利害関係の中では、親権者の公正な権利を行使

をすることは困難と判断されますので、第三者たら特別代理人によって、子の利益

を確保しようという立法趣旨です。

 

 「相手方のない単独行為」である相続放棄は、上記利益相反関係に当てはまるのでしょうか。

 

 古い大審院の判例では、「相続の承認又は放棄のような相手方のない単独行為は利益

相反行為に該当しないので、数人の子に対して親権を行う父母がその一部の子のために

相続の放棄をするについては、特別代理人の選任は要しない」(大審院明治44.7.10判決)

と解されていました。

 しかし、最高裁は「民放826条は、適用の対象となる行為を相手方のある行為に限定する

趣旨であるとは解されないから、相続の放棄が相手のない単独行為であるということから

直ちに民法826条にいつ利益相反行為にあたる余地がないと解するのは相当ではない」

(最高裁昭和53.2.24第二小判決)と、判例に変更を行いました。

 ただ同判例では、「①親権者がすでに相続の放棄をしている時、②子と同時に放棄する時は

利益相反行為にが該当しない」としています。この状況では実質的に親権者は放棄により、

自らの利益を喪失しているためだと考えられます。

 

 登記実務は上記大審院判例に沿って、昭和25年4月27日民事甲第1021号通達で特別

代理人の選任を要しないとし、昭和35年10月27日民事甲第2659通達もこれを踏襲して

います。

 ただ、昭和53年の最高裁判決の立法的な本質を考慮すると、やはり未成年者の相続放棄

の申立については利益相反行為に該当すると考えるのが妥当ですし、子の利益保護の観点

に立っても相当性は十分にあると言えます。

 

 どちらにしても、登記申請段階では「相続放棄申述受理証明書」を添付しますが、申立人の

適法性等は当該書面では判明しませんので問題になることはなく、むしろ家庭裁判所の

申立時に審査されるべき事項になります。

 

                       司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志

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