2014年6月アーカイブ

商業登記における更正

ついにブラジルW杯も開幕しましたね。

試合を観たいものの、基本的に観る時間も無く毎日録画

だけしている状況です(泣)。

私の応援しているイタリア代表も初戦に勝ちましたので、

ホッとしました。

 

 以前不動産登記における更正登記のことを書きましたが、

今日は商業登記における更正登記について。

 

 商業登記法132条には、「登記に錯誤又は遺漏があるときは

当事者は、その登記の更正を申請することができる」とあります。

 

 《錯誤または遺漏》とは、登記しようと欲したところと登記されたところ

が一致しない場合をいう(東京控決、大9,9,9)と解されていますが、

要は、この錯誤または遺漏によって当初から事実と符合しない登記が

されている場合に、これを事実と合致させるための登記です。

 

 例えば、取締役Aについて「平成26年6月●日解任」による退任の登記

申請がなされたところ、Aは解任される以前に辞任をしていたとして、

「平成26年5月●日辞任」と更正登記できるでしょうか。

 

一見、更正登記できそうですがこの事例では、更正登記はできず、Aの

解任による退任登記を抹消し、改めて辞任による退任登記をすることに

なります。

 

 取締役Aの辞任の意思表示の効力は、その意思表示が会社に到達した

時に発生し、会社の辞任に対する同意は不要です。もちろん、辞任により

法定または定款で定まる取締役の員数を下回る場合は、権利義務を有し

辞任の登記ができません。

 

 この事例では、Aの辞任の意思表示は平成26年5月●日既にその効力が

生じており、その後行われた解任決議そのものが無効ということになります。

このことは権利義務取締役になっている場合でも結論は変わりません(昭和

39年10月3日民甲3197号回答)。

 

 

                司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志

取締役の選任について

毎日湿度が高いですね。

ジメジメし過ぎて気が滅入ります…。

汗をかく分、一日を締めくくるビールは最高に美味しいのですが。

 

6月に入り定時総会を開催されている会社や、これから開催を予定

されている会社は多いことでしょう。

総会で取締役の選任議案を決議される予定の会社もたくさんあると

思います。

 

株主総会において取締役が選任される効果は、当該選任決議を受けて、

被選任者がこれを承諾したときに発生します。選任決議そのものは、会社

内部の意思決定または被選任者に対する任用契約の申込にすぎないと

するのが通説のようです。

となると、被選任者の就任承諾によって、会社と被選任者間で、取締役任用

契約が締結され、その結果、被選任者は取締役の地位に就くということに

なります。

 

 会社と取締役の関係は、会社法330条のとおり「委任」に関する規定に従う

とされています。ちなみに、明治の古い判例では、「株主総会における取締役

選任決議の効力は、委任関係を生ずるものではないので、被選任者の承諾を

待たないで発生する(明治36.3.14民録9.309)」と解釈していた時期も

あるのは、少し驚かされます。

 

 取締役の就任による変更登記の際、「就任を承諾したことを証する書面」を添付

しなければならないのは、周知のとおりです。

 独立した就任承諾書でもよいですし、株主総会議事録の記載から被選任者が就任

承諾したことが明確であるならば、議事録を援用できます。

 過去の質疑応答等では、議事録の記載があっても援用を否定した例もありますので

下記にご紹介しておきます。

 

 『株主総会に出席しいなかった被選任者から、電話で就任承諾の了解を得た旨の

記載のある株主総会議事録は、当該役員の就任を承諾したことを証する書面とはな

らない(登記研究492.120)』

 『取締役就任についてあらかじめ内諾を得ていることを株主総会に報告し、その旨の

ことが記載されている株主総会議事録をもって、取締役の就任承諾を証する書面として

登記申請するこはできない(商事法務1225.4)』

 

 どちらも今の実務感覚からすると当たり前のように感じますが、前述のとおり被選任者

が就任の意思表示を明確に行った旨が株主総会議事録に記載されていることが、最も

重要です。

 以前、株主総会の議事録の記載方法について触れましたが、被選任者がその総会に

出席していることを議事録に記載されていることも大切になります。

 

                       司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志

 

 

株式会社の清算

もうすぐW杯開幕ですね。

子供の頃からサッカーをしていたこともあり、未だにサッカー大好き

人間の私にとっては、4年に一度ワクワクする時期であります。

私は日本人ですが、昔からイタリア代表を応援しています。

 

 今日は会社の清算についてです。

 株式会社は会社法471条の事由により解散した場合、会社法

475条に基づき清算が開始します(合併等は除かれます)。

 

 その後定款の定めや株主総会の決議により、清算人が選任され

て、清算人はその事務を開始することになります。

 

 まず清算人はその就任後遅滞なく財産目録及び貸借対照表を作成

しなければなりません(会社法492条)。

 また、清算開始後遅滞なく2ヶ月以上の期間を置いて、債権者に対して

期間内に債権の申出を促すための官報公告と知れている債権者に対し

て催告をしなければなりません(会社法499条)。

 

 上記を理由として解散の効力発生日から清算結了の登記の間は、2ヶ月

以上空いていなければなりません。実体的な債権者保護手続がとられてい

ことを、前提にしているからです。

 清算結了登記の申請時は、この債権者保護手続を行ったことを証する書面は

添付書面ではありません。

 個人的には、真正な清算手続を行った上、債権者に対する実質的保護を講じた

ことを証するため、官報及び催告を証明する書面は清算結了登記申請の添付

書面とすべきではないかと考えています。

 

 清算に関する内容は、今後も書いていくことにします。

 

                  司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志

相続登記における添付書面②

私は広島出身ですので、広島東洋カープのファンです。

今年は開幕から調子が良く、優勝を狙えるかも…と少し

期待もしましたが、交流戦が始まりガクッと調子を落とし

ています(タメ息)。

前回優勝したの時は私が小学生の時なので、何としても

カープが優勝する姿を見たいのですが。

 

 以前、相続登記における添付書面について触れましたが、

相続登記のケースの中でも一番添付されるであろう「遺産

分割協議書」について。

 

 遺産分割協議の解説は今回は割愛しますが、通常相続発生

後、相続人間で話し合い不動産について誰が相続するのか

を決定します。

 勿論、法定相続持分で登記するのであれば遺産分割そのものは

必要ないですが、不動産に関してはその物件に居住しているとか

居住する予定だとか、売却する予定だとか、様々な理由で相続する

者を選ぶ事の方が割合的にも多いです。

 

 相続登記のご依頼をいただいた場合、大抵こちらで遺産分割協議書

を作成し、相続人の皆様にご確認の上署名捺印をして、協議成立という

パターンが一般的です。

 この場合相続登記申請時には、前回もお話したとおり当該遺産分割

協議書とともに、被相続人の除籍謄本や相続人の戸籍謄本を全部添付

しなければなりません。

 理由は申請先の法務局に対して公的証明たる戸籍謄本等を添付する

ことで、不動産登記名義人の真正な相続人であることを証明するためです。

 

 では、遺産分割協議書を公正証書で作成するケースや遺産分割調停が

成立するケースでは、登記申請時戸籍謄本等の添付は必要になるのでしょ

うか。

 答えはどちらのケースも「添付不要」です。

 公正証書のケースは公正証書作成段階で公証人が公証人法の規定により、

十分に確認を行っていますし、遺産分割調停事件のケースも家庭裁判所が

申立段階で相続人たる適格性を審査していますので、登記申請時に二重に

確認する必要はないとの考えがもとになっています。

(公正証書「東京登記実務協議決議(昭和59年12月10日決議)」

東京法務局だより第162号)

(遺産分割調停「昭和37年5月31日民甲1489通達)

 

                司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志

代表理事を評議員会で選定することの可否

北海道を除き全国的に梅雨入りしました。

ジメジメ虫との闘いの始まりですね。

私は早々と半袖で仕事に励んでおります。

 

今日は表題の記述が登記研究794号45項にありましたので

少しご紹介をいたします。

 

質問内容は要約すると以下のとおり

「公益財団法人では理事会の設置は必須とされていますが、定款に

 定めを置くことにより、評議員会でも代表理事を選定できますか?」

 

回答は以下のとおり

「代表理事を評議員会で選定することができる旨の定款の定めがあれば

 評議員会で選定可能です」

 

 この中の解説にありますが、一般社団法人では「理事は、一般社団法人

を代表する。ただし、他に代表理事その他一般社団法人を代表する者を

定めた場合は、この限りではない(一般法人法77条1項)」とありますが、

公益財団法人及び一般財団法人にはこの規定はありません。

 一般・公益財団法人それぞれ理事会の設定は必須ですから、この規定

は必要が無く、理事会で選定するのが当たり前だから(一般法人法90条3項)。

 

 では、今回の質疑のやりとりである評議員会に代表理事の選定権限を付与する

ことは問題無いのかという点について、「評議員会は、この法律に規定する事項

及び定款で定めた事項に限り、決議することができる(一般法人法178条2項)」

ということを根拠に、理事会の代表理事選定権限そのものを剥奪できないが、

定款に定めをおけば評議員会でも代表理事を選定できるとの実務的見解と

しています。

 理事会設置一般社団法人も同様です。

 

 また、取締役会設置会社たる株式会社において、定款の定めを置けば株主

総会で代表取締役を選定することは可能です(商業登記ハンドブック第2版389項)。

 会社法295条2項と一般法人法178条2項の立法趣旨は同一であること

から、今回の質疑と同じ解釈が導かれるというこでしょう。

 

 理事会設置一般社団法人や公益・一般財団法人において理事会で代表理事を

選定をすることが困難な事由が生じた時等を想定して、社員総会や評議員会に代表

理事の選定権限を与える旨の定款の定めを置くことは、有用かもしれませんね。

 

                     司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志

会社の印鑑届

6月に入り一気に暑くなりました。

最近ではクールビズもすっかり定着して、涼しげな装いの方が

多くなりました。

京都地方法務局の職員の方も皆さんクールビズスタイルですが

、数日前法務局へ行ったら、扇風機が何台か回っているのみで

、最高に蒸し暑かったです。

いくら節電協力とはいっても、真夏になったらどうなるのか…(恐)

 

今日は法人の印鑑届についてです。

商業登記法20条1項では、登記の申請書に押印すべき者は、あらか

じめ法務局に印鑑を提出しなければならないとされています。

会社の場合であれば原則は、代表取締役です。

つまり、「会社の実印」と呼ばれるものです。

 

この理由は、法務局へ提出された印鑑と登記の申請書又は委任状に押印

された印鑑を照合することによって、登記申請そのものが真正な申請人(会

社自身)によってなされているかを担保するためです。

私共が登記申請のご依頼をいただく際委任状をいただきますが、ここに会社

の実印を押印していただくのも、このためです。

 

会社の印鑑作成はほとんどがご近所のハンコ屋さんで作られると思いますが、

印鑑自体にも法律で制限がされています。

商業登記規則9条3項では、①辺の長さが1cmの正方形に収まる大きさのもの

又は②辺の長さが3cmの正方形に収まらない大きさのものであってはならない

とされています。

要は、小さすぎず大きすぎずの大きさの印鑑を届けなければならないということに

なります。

法務局は届出書に押印された印鑑をスキャンしてデータとして保存しますので、

このように大きさが規定されているのでしょう。

 

また、印鑑届書には、当該届書の印鑑につき市区町村長の証明書で作成後3

ヶ月以内のものを添付する必要があります。つまり代表者の個人の印鑑証明

書を添付し、印鑑届書にもその個人の実印の押印をしなければならないと

いうことです。

 

代表取締役が交代されるケースでは、新代表者から印鑑届が必要とご認識ください。

ちなみに代表取締役の就任承諾書に添付する印鑑証明書と上記印鑑証明書は

兼ねることは可能ですので、ご準備通数は1通で足ります。

印鑑届書は法務局の窓口にありますし、法務局のHPでもダウンロード可能です。

 

http://www.moj.go.jp/content/000011576.pdf

 

会社に限らず、法務局で登記されている法人で代表者が交代する場合は、すべて

共通ですので、ご注意ください。

 

                   司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志