2015年10月アーカイブ

宗教法人における公告期間

10月も終わりに差し掛かり、今年も残す所

2ヶ月となりました。一年という時間が早く

感じるのも、充実した日常を過ごしている

ことの証なのかよく分かりませんが、元気

に生活できていることに感謝しなければ

なりませんね。

 

 

以前当ブログでも宗教法人の財産処分に

ついて触れましたが、財産処分について

定めたものが宗教法人法23条にあります。

 

不動産等の処分を行う場合に、規則に定める

手続きによる外、『その行為の少なくとも1ヶ月

前に』信者その他利害関係人に対し、その行為の

要旨を示してその旨を公告しなければならないと

されています。

 

ここで『その行為の少なくとも1ヶ月前に』の理解

ですが、文化庁発行「宗教法人の事務(改訂版)

・ぎょうせい」66項によると、以下のとおり説明され

ています。

 

公告を行う時期に関して、宗教法人法は、「……「その

行為の少なくとも1ヶ月前に」という形で定めています。

これは、少なくとも1ヶ月前に公告を開始することを

想定したものではなく、少なくとも1ヶ月前に所定の

公告が終了していることを要求しているものです。

その所定の公告の終了後の1ヶ月という期間という

期間は、それを知った信者その他の利害関係人

が意見を述べるための期間なのです。

(※条文上は1ヶ月ではなく、一月と定められています)

 

会社法の条文構成は、「その期間は、1ヶ月を下ることが

できない」とあり公告から効力発生日の間が1ヶ月の期間

を要す趣旨とされておりますが、宗教法人の公告の場合は、

効力発生予定日の1ヶ月前までに所定の公告を《完了》さ

せておかなかればならない点は、注意が必要です。

 

 

      司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志

遺産分割協議の解除

一昨日、京都では時代祭が行われ多くの

見物客で賑わいました。

ただ、私の事務所は京都御所の南に位置

するため、道路の封鎖によりなかなか事務所

に辿り着けず、大変疲れました…。

 

今日は一旦成立した遺産分割協議を、後に

なって解除することについて、少し触れたいと

思います。

 

例えば、遺産分割協議を行う際よく使用される

類型として「代償分割」があります。これは

相続人の1人が相続財産を取得する見返りに

他の相続人に金銭を支払うような約定をもとに

遺産分割協議を成立させるケースです。

 

この場合、協議後代償金を支払わないことに

起因して、遺産分割協議を解除することが

できるか否かについて、判例は「遺産分割

は協議の成立とともに終了し、後は相続人

間の債権債務の関係が残るだけであること、

遡及効を有する遺産分割の法的安定性を

著しく害すること等」を理由に否定しています

(最判平成1年2月9日)。

 

対して、共同相続人全員の合意により、既に成立した

遺産分割協議の内容の全部や一部を解除して、

改めて遺産分割協議を行うことは認められています

(最判平成2年9月27日)。

 

上記のケースで、既に遺産分割協議に基づいて

相続登記がされている場合は、まず錯誤を原因

として既登記の相続登記を抹消し、新たな遺産分割

協議書を登記原因証明情報の一部として添付し、

相続登記を行うことになります(登記研究428号135項)。

所有権の更正登記を行うことはできません。

 

一度成立した遺産分割協議を再度やり直すことは

稀かもしれませんが、後に禍根を残さないように

相続人それぞれが自らの権利を基準として、明確

な意思表示を行うことは重要です。

 

 

  司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志

 

遺産分割と印鑑証明書

朝晩グッと寒くなりまして、秋も深まって

参りました。これから京都は紅葉の季節

を迎え、多くの観光客で賑わうことにな

ります。

 

今日は遺産分割協議に関連した登記の

添付書面について、2つご紹介します。

 

『前提』

 被相続人 A(父)

 相続人 B(母) C(長男) D(長女)

 

①Aが亡くなり、自宅不動産について

 B、C、Dの間で遺産分割協議を行い、

 長男であるCが相続することになりました。

 相続登記に向けて書面の準備をしている

 さなか、母Bが死亡してしまいました。

 死亡前にBが取得した印鑑証明書は

 手元に存在します。この印鑑証明書を

 添付して、登記申請は可能でしょうか。

 

⇒遺産分割協議書に添付する印鑑証明書

 については、特段の期間の制限はありま

 せんので、母Bの生前の印鑑証明書を

 添付して、相続登記申請することは可能

 です。

 ちなみに、売買や贈与による所有権移転

 登記、抵当権設定登記の際に添付する

 印鑑証明書については申請時を基準に

 3ヶ月以内のものが必要です。

 これは、同じ印鑑証明書でも添付に対する

 根拠法令が異なるためです。 

 

②Aが亡くなったので、自宅不動産について

B、C、Dの間で遺産分割協議を行い、

長男であるCが相続することで合意成立

しました。その内容について遺産分割協議

書を作成したものの、登記に添付するBの印鑑

証明書の交付を受ける前に、Bが急死してしまい

ました。よって、Bの印鑑証明書を添付できない

場合、どのように対応すればよいでしょうか。

 

⇒この場合、真正な相続人であるBとC及びDの

 間で遺産分割協議は成立したことは事実です

 ので、その事実とBが死亡したことによりBの

 印鑑証明書を添付できない旨を記載した証明書

 をC及びDが作成することで、補完できます。

 当該証明書には、C及びDの実印の押印とそれ

 ぞれの印鑑証明書を添付します。

 

遺産分割協議書に押印する実印の印影と印鑑証明書

の印影を照合することで、法務局はそれが真正な

協議書であるか確認をいたします。

よって、遺産分割協議書に押印する際は綺麗な印影

になるようにご留意ください。

もし、薄かったり欠けたりした場合も、その横に押印

しても問題はありません。

 

   司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志