2015年8月アーカイブ

代表取締役の辞任における住所異動

8月ももう少しで終わりですね。

学生さんは夏休みも終わり新学期開始で

憂鬱な心境に陥っているのでしょうが、

社会に出てしまうとそんな感覚も忘れ

てしまっています。

小学生の頃の夏休みは楽しかったなあ…。

 

代表取締役の辞任登記の際、辞任届に

記載された住所と登記簿上の住所が一致

しない場合は、辞任登記の前提として

代表取締役の住所変更登記が必要に

なります。

住所異動を証明する住民票等を添付して

も、住所変更登記を省略はできません。

 

また辞任届上の住所と登記簿上の住所が

一致しているものの、改正商業登記規則61条

6号により添付される印鑑証明書の住所が一致

しない場合もありえます。

 

民事月報平成27年4月号「平成27年改正商業

登記規則等に基づく商業・法人登記事務の取扱い

について」佐藤真紀子著 によると以下のとおり

区別しています。

 

・印鑑証明書の発行日付が辞任日より前

⇒ 上記のとおり、前提として住所変更登記が必要

・印鑑証明書の発行日付が辞任日より後

⇒ 住所変更登記は不要

 

後段の考え方は、辞任の意思表示を行った後に

住所移転の事実が生じたため、住所変更登記が不要

になることもあるから、法務局は住所以外の点、法務局

の印鑑届にある生年月日と当該印鑑証明書の生年月日

を確認して、登記を受理するというものみたいです。

 

私は以前も申し上げたかもしれませんが、代表取締役

の辞任の局面においては、個人の実印押印と印鑑証明書

添付に限定すべきと考えています。

法務局への届出印(会社実印)は当該代表取締役が管理

していて然るべきだというスタンスで会社実印の押印でも

可(商業登記規則61条6号但書)とされているとしても、

辞任の意思表示は代表取締役個人の自発的行為ですので、

それを証するためにはやはり個人の実印に限ることで、その

辞任が真正な事実であることを担保できるのではないでしょうか。

よって、改正商業登記規則61条6号は中途半端なイメージを

拭い切れません。

 

 

         司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志

氏名・住所更正における添付書面

お盆休みに広島の実家に帰省しました。

やはり、生まれ育った環境というのは、多忙な

毎日から解放されて、メンタルな部分でも非常に

有益なことだと感じました。

一つ気になったのは、屋根が抜け、今に倒壊しそうな

空家と思われる建物が増えていたことです。

昔の町並は未だ残っているものの、こういう風景

を目の当たりにするのは少し寂しいですし、小さな

地方都市としていい意味で再生していって欲しいな

と、改めて思いました。

 

前回も商業登記規則61条5項による本人確認

証明書の現況をお話しましたが、それに関連

して、登記研究809号で商業法人登記における

「氏名・住所更正」についての記述がありました。

 

商業登記法132条2項では、「更正の申請書に

は、錯誤又は遺漏があることを証する書面を添付

しなければならない。ただし、氏、名又は住所の

更正については、この限りでない」と規定されて

います。

 

つまり、現在登記されている役員の氏、名又は

住所を更正したいときは、その誤り(錯誤)を証明

する書面を添付を要することなく、登記申請が

できるということです。

 

この記述では、商業登記規則が改正により役員

の実在性を担保するという名目で本人確認証明書

の添付が義務付けられたにも関わらず、氏、名又は

住所の更正登記の際は添付不要との取扱とのバランス

がとれないのでは?との疑義が焦点になっています。

 

著者の神崎氏は商業登記法が改正されていない

ため添付不要との認識を示しており、私も根拠法令

が存在しない以上は添付は不要だとは考えます。

 

著者は「再任」の場合は、本人確認証明書の添付が

不要とされていることに言及し、錯誤による更正登記

にその証明書面の添付が必要と解するならば、「再任」

の場合に本人確認証明書を添付しないこととの均衡を

失するとしています。

 

氏、名又は住所の更正登記において、錯誤を証する

書面の添付が不要との取扱は、商業登記規則の改正

趣旨にも鑑みて、その実在性に加えてその人物の正確

な氏名を登記をするためにも、更正登記の際にもその

証明する書面を添付する必要性も少しあるのではないかと

感じます。

 

添付義務がないにしても、更正登記を申請する前提として、

その錯誤が正当な事由であるか否か関係書類等の提供を

受け、確認するというスタンスを貫くことが肝要ですね。

 

 

      司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志

 

役員変更登記における本人確認証明書

連日の猛暑で体力的にきつい日が

続いておりますが、皆様体調を崩された

りされておりませんでしょうか。

世間はお盆休みに入りつつある感じで

しょうか。例年のような落ち着いた雰囲気

がしてきております。

 

以前も書きましたが、商業登記規則が2月末に

改正されて数ヶ月が経過し、法務省のPR等に

より、各法人様にも浸透してきた感があります

役員変更登記の際の「本人確認証明書」につ

いてです。

 

再任を除く取締役、監査役若しくは執行役の就任

承諾書に記載された氏名及び住所につき市区町

村長その他の公務員が職務上作成した証明書

(当該取締役当が原本と相違ない旨記載した

謄本を含む)の添付が義務付けられました

(⇒商業登記規則61条5項)。

 

実務的には住民票か運転免許証のコピーの

原本証明付でご準備していただくケースが多い

ですが、この運転免許証のコピーについて少し

判断に困る場合があります。

 

運転免許証のコピーを添付する場合は、表と

裏両方のコピーが必要になります。これは

住所や氏名に変更があった際に裏面にその

変更事項が記載されるという要請からですが

、この裏面の住所記載について国外免許証

の取得の関係で、ご自身の直筆が定かでは

ないのですが、現住所とは異なる住所記載

(おそらく居所と思われる)があり、就任承諾

書にどちらの記載を為すべきか、迷うケース

もあります。

 

裏面には「平成年月日住所移転」のような記載

もないため、住民票上の住所を移転した事実

も推認されないため、余計にその判断に困る

ことになります。

 

この場合は登記申請上の添付書面として、

商業登記規則61条5項で規定する本人確認

証明書としての適格性を充足しないため、住民

票等を別途準備してもらうのが妥当だと考えて

おります。

 

よって、パスポートも最後のページに住所を記載

する欄が存在しますが、これは本人が直筆で記入

する形式であるため本人確認証明書としては不可

ですし、健康保険証も同様です。

 

先日ある司法書士の先生とのお話で、立法上は氏名

と住所が特定できれば良い訳であるから、運転免許証

の顔や生年月日や免許証番号等をすべてマスキングし

て、本人の原本証明をした形式のものでも、登記上は

問題ないのではないかという趣旨の内容を仰られて

いました。

 

法務局の形式的審査権限が、運転免許証としての

実在性の確認にまで及ぶのであれば、不適切な印象

を受けますが、立法趣旨をシンプルに読めば特に問題

がないとも言えます。

 

個人情報保護の観点からそのような要請が増えるで

しょうから、実務的にどのような判断がされるか少し

様子を見たいと思います。

 

 

司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志