2015年5月アーカイブ

監査役の会計監査限定登記の省略

今日も京都は30度を超える予想で、かなり

暑くなっております。

これから梅雨を経て夏本番を迎える訳ですが、

例年どおり体力勝負になりそうですね。

 

5月1日から改正会社法が施行されました。

ご存知のとおり、非公開会社の監査役は

「監査役の範囲を会計に関するものに限定

する旨の定款の定め」が登記事項になり

ました(以下、「会計監査限定登記」)。

 

改正会社法附則22条では、「この法律の

施行後最初に監査役が就任し、又は退任

するまでの間」は会計監査限定登記するこ

とが猶予されておりますので、今年監査役

に異動がない会社は登記をしなくても、懈怠

になることはありません。

 

そんな中、一つの疑問浮上しました。

 

【改正会社法施行後に定款の変更決議を

行い、監査役の会計監査限定の定めを

廃止した場合、いったん会計監査限定登記

をして、同時に廃止の登記をしなければ

ならないのか??】

 

この疑問に対して、「改正会社法の実務論点;

金子登志雄著」の10項によると、登記必要説

と不要説の両説が考えられると記述しています。

 

私は商業登記の公示の連続性と、附則22条が

ありながらも、法律的発生事実に照らし合わせて

必要説を支持しておりますが、先日京都地方法務

局に照会をしたところ、不要説をとるとの見解でした。

とは言っても、必要説による会計監査限定登記と廃止の登記

を同時申請することは、あくまで申請会社の任意なので

登記は受理するとのスタンスのようです。

 

これから定時総会の開催を予定されている株式会社も

多いので、以上を踏まえた上で周知していきたいと考え

ております。

 

 

    司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志

各種法人の利益相反取引の処理①

上場企業の決算の発表が相次ぎ、軒並み

「過去最高」というフレーズを目にし、株価も

2万円前後をウロウロしていますが、日本の

全体が景気が良いとは、到底思えませんね

…。来年には消費税の増税がありますし、

消費者の意識としては、今まで以上に倹約

の方向に向く気がしてなりません。

 

株式会社と取締役の利益が相反する時(例:取締役と

株式会社が売買契約を行う等)は、取締役会又は株主総会

の決議が事前に必要になりますね。

売買による不動産登記を行う上でも、上記の議事録の添付が

必要になります。

 

では、会社以外の法人で利益相反行為が生じる場合は

どのように処理がされるのでしょうか。

 

・宗教法人

 宗教法人と代表役員との間に利益相反が生じる場合は、

代表役員は代表権を有しませんので、この場合は、規則に

従い、仮代表役員を選ばなければなりません。

 

・医療法人

 医療法人と理事長との間に利益相反が生じる場合は、

理事は代表権を有しません。この場合、医療法人を代表

する特別代理人を選任する必要があります。この選任権

者は都道府県知事になりますので、県庁等に事前に申立

を行う必要があります。

 

・学校法人

 学校法人には役員として理事5名以上と監事2名以上が

置かれていますが、理事の中から理事長が選任され、法人を

代表することになります。

 学校法人と理事長との間に利益相反が生じる場合は、理事長は

法人を代表することができませんので、この場合、所轄庁は利害

関係人又は職権で特別代理人を選任しなければなりません。

所轄庁は学校類型で異なりますが、文部科学大臣か都道府県知事

になります。

 例外として、学校法人は寄附行為により、理事(理事長を除く)が

学校法人を代表する旨を設けたときは、「代表権の範囲又は制限に

関する定めがあるときは、その定め」を登記しなければならないと

されていますが、その登記された理事が利益相反行為と直接的な

関係を有しない場合は、その範囲・制限内で、理事長に代わって

学校法人を代表できる場合があります。

 

 

その他の法人は、次回以降にご紹介いたします。

 

           司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志

 

 

 

 

 

「他に相続人はいない」旨の証明書

昨日は京都は葵祭でしたが、何とか雨も降らず多くの見物

客の方が事務所前にいました。

気温が高かったせいか、歩いている馬は多少機嫌が悪そうでしたが…。

 

さて、相続登記の添付書面では以前お話しましたが、被相続人

の死亡から出生までのすべての戸籍、除籍、原戸籍謄本を添付

する必要があります。添付趣旨は、法定の相続人を確定させる

ためです。

 

しかし、除籍謄本等においては保存期間の経過(以前は80年でしたが

平成22年法務省令22号改正によって150年になりました)により、

除却されて、役所から取得することができない場合もたくさんあります。

 

登記実務ではこの場合、「廃棄処分により除籍謄本を交付できない」旨の

市町村長の証明書(よく、廃棄証明書といいます)と併せて『他に相続人は

いない旨の証明書』を添付することで、登記申請を行います。

この証明書は、共同相続人全員の印鑑証明書付きのものでなければなり

ません(昭和44年3月3日民事甲373・昭和55年2月14日民三867等)。

 

相続人の皆様に説明して、遺産分割協議書に押印いただく際に併せて

押印いただくことが常でして、ほとんどの皆様は御理解いただいて証明書

に押印をしていただきます。

しかし、下記のような質疑応答のおかげで、相続人の中に相続放棄者がい

る場合には、当該相続放棄者も証明書の主体になります。

 

除籍謄本を添付できない場合の相続登記添付書類の取扱い(登研383号)
《相続登記手続(総説)》《添付書面(その他の書面)》
 ○要旨 「火災焼失により除籍謄本を添付できない」旨の市町村長の証明書及び
「他に相続人はない」旨の相続人全員の証明書(印鑑証明書付)を添付して相続登
記を申請する場合の右相続人には、相続を放棄した者も含まれる。
 ▽問 相続登記を申請するに当たり、市町村長から「火災焼失により除籍謄本を添付
できない」旨の証明書を添付した場合、「他に相続人はない」旨の相続人全員の証明書
を添付する取扱いとなっているが、相続を放棄した者もその中に含まれるでしょうか。
 ◇答 相続放棄した者も含まれるものと考えます。
 なお、右証明書には、相続人全員の印鑑証明書を添付することが必要です
  (昭和44、3、3民事甲373号民事局長回答参照)
 
相続放棄者は法律上、相続人でなかったものとみなさるはずなのに
その証明書の主体になるのは非常にナンセンスだと私は考えていま
すが、法務局は今後もこのスタンスを変えることは無さそうです。
何度か私は、相続放棄者の理解を得られず、苦労したことがあります(泣…)。
 
登記研究717号182項を参考に、どうしても相続人の中に被相続人の身分関係
を証明できない事情があるためその理由を証明書中に記載して、登記を受理して
もらったケースもありますが、例外中の例外と考えるが妥当でしょう。
 
 
                   司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志
 
 

商業登記規則改正のその後

GWも終わり、カラダが連休モードから徐々に回復しつつ

ある状況です。

私的な話ですが、4月の後半は食中毒にかかり2週間近く

体調を崩しました。やはり健康が一番だと実感する日々で

ございます。

 

前回は商業登記規則の改正の話でしたが、今年の2月27日

から正式に改正施行されました。

実務に一番影響を与えていると言えば、新任役員の就任登記

の際、「本人確認証明書」の添付です。

 

新任役員の実在性の担保がその主目的でありますが、新任の

役員に本人であることを確認できる書面(以下、「本人確認証明書」

)を添付が義務付けされました。

 

登記情報642号28項でその本人確認証明書の例が紹介されて

います。

・住民票、住民票記載事項証明書

・戸籍の附票

・外国居住者に対する日本国領事の証明書 (在留証明書)

・運転免許証

・住民基本台帳カード

・在留カード

・特別永住者証明書

・運転経歴証明書

の謄本(コピー)であって、当該取締役等が原本と相違がない旨を記載し

署名又は記名押印したもの

 

Aのカテゴリーは、役員本人が市区町村長等で発行受けた公的証明書

そのものです。

Bのカテゴリーが容認された理由は、申請書への本人確認証明書の添付

につき過度の負担が生ずることにならないよう、配慮されたものと考えら

れると説明されています。

 

Bのカテゴリーを添付書面とする場合は、おそらく運転免許証が多いかと

考えられますが、運転免許証は変更履歴等が記載されますので、裏面に

何も記載がなくても必ず裏面のコピーも必要になります。

(私は一度これで補正になりました)

 

前掲の登記情報では、本人の印鑑証明書も本人確認証明書に該当する

とされています。印鑑証明書は商業登記規則61条2項や4項で添付が

義務付けされる場面がありますが、住所及び氏名が記載された公的証明

であることに変わりはありませんので、もっともかと思います。

 

また、本人確認証明書の原本は商業登記規則49条2項に基づき、還付

請求ができる取扱いなっています。

 

今後も実務的に気づいた点があれば、ご紹介をしていきます。

 

              司法書士法人高山事務所 司法書士梶原貴志