2013年11月アーカイブ

株式と相続について

皆様 こんにちは

 

京都は秋も深まり、これから冬本番と言った所で、かなり寒さも厳しいものになってきております。

これからは温かいお鍋とお酒がおいしい季節になりそうです。

 

今日は、株式と相続について書きたいと思います。

 

株式会社にはオーナー社長であろうと第三出資者であろうと株主が存在し、その株主が死亡し相続が発生すると、法定相続人による株式について共有状態になります(民法898条)。

遺産分割協議等で確定的に相続人が株式を取得すれば問題ないのですが、相続人の揉め事などで相続未確定状態の場合は、株式が共有のまま継続してしまいます。

 

その状態が続いてしまうと、会社にとって見ると誰を株主として適切に取り扱ってよいのか判断に困りますので、会社法106条が規定されています。

  第106条

 

 

株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは共有者から生ずる事務の煩雑さを回避するという、会社の便宜を図るためおかれた規定です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つまり原則は相続人から、「私達相続人の代表は、長男のAです」と会社に通知しない限りは、会社は死亡株主の株式については、会社が同意しない限りは、株主としての権利行使を認める必要がないということになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例えば、ある株主が死亡した後に株主総会を開催するため、その召集通知を発する場合は、相続人から何の連絡も無ければ、相続人のうち1名に対し通知すればよいですし(会社法126条4項)、通知の結果106条に基づく適切な通知が無いにも関わらず、相続人の一人が権利行使してきた場合は、会社としては否認すればよいと考えます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では、代表として権利行使をする者(以下、「権利行使者」)を定める時はどのように決定してたらよいのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

判例は、株式の共有者が会社に対し権利を行使するためには、共有者は、共有者の中から権利行使者を定めることを要するが、権利行使者を定めるに当たっては、共有物の管理行為として、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決することができる(民法252条 最三小判平成9年1月28日判時1559号139項)としています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その理由は、共有者の全員一致とすると、一人でも反対すれば全員の権利行使が不可能になり、会社の運営にも支障を来す恐れがあるからとしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実際の相続に置き換えてみると、例えばオーナー社長が亡くなり、妻、長男、次男、三男が相続人だとします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子供同士が仲が悪い場合に、次の役員の選定や会社の事業に関わる大切な事案を株主総会で決議しなければならない場面において、子供達からすれば妻(=母)を自分の味方につければ、妻の法定相続持分は2分の1ですので、自らの持分を足せば過半数を確保できるので、自らを権利行使者として、株主総会で権利行使ができることになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

となると、会社の事業支配は根本から覆る可能性も秘めているため、判例の中にはそのような権利行使者の議決権行使が権利濫用に当たるとされた例もあったり(大阪高判平成20年11月28日判時2037号137項)、学説中には、同族会社の支配株式の権利行使者の選定については、同社の実質的な承継者の決定であるため、単なる共有者の管理行為とは同視できないので、共有者全員の同意を要すると解する見解もあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、日本の中小企業の多くは同族会社であるため、共有者の管理行為として過半数で権利行者を決定するという考え方は、後の会社経営に多大な影響を及ぼすことから、学説にあるような「全員一致」とする方が好ましいのかと、考えています。しかし、会社の株主構成によっては、「全員一致」を求めることでかえって株主の権利行使が妨げられ、会社運営や事業支配い悪影響及ぼすことも想定されるので、法律的利益等を考慮しても、非常に難しい点があるとも感じています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在の日本は高齢化社会であり、中小企業の経営者の高齢化も顕著であるため、このような株式の相続問題もこれから頻発してくるのではと、懸念しております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

司法書士法人高山事務所  司法書士梶原貴志